カメさん日報です。
本日は、「人を大切にする経営学会北海道支部」本格始動のため、坂本光司会長と事務局坂本洋介さんと一緒に、札幌、地元企業や中小企業基盤機構、北海道中小企業家同友会等を回りました。
その中で、1年半振りにお伺いした印刷会社株式会社アイワード(本社/札幌市中央区)について紹介します。
印刷市場は、1980年代後半から1990年代前半を頂点に、1999年以降、縮小の一途です。ピークの1991年には8.9兆円の市場規模は落ち込む一方です。。2005年から2010年の5年間の出荷額は、6.1兆円から5.1兆円(11.5%減)、事業者数は、約1万3800ヶ所から約1万900ヵ所(21.0%減)、関わる従業員数は、約27万5800万人から約24万7000人(10.4%減)しています。実際、印刷会社の約80%は赤字経営と言われ、3K(キツイ・汚い・危険)のイメージも強く、人の採用にも苦労している業界。デジタル化が進むことに加え、企業経営のコスト削減のため、3Kと呼ばれる「交通費」「交際費」「広告費」を抑制により、印刷業界は一段と冷え込んでいます。
印刷業界が抱えるもう一つの課題は、大日本印刷と凸版印刷の大手2社で売上高3兆円、シェア57%のシェアを占める一方、99%の印刷会社が従業員300名以下の小規模会社であるという業界構造になっています。業界内では、大手2社の下請やその孫請けとして印刷業務を展開しています。つまり、印刷会社の一番のお客様が印刷会社と言われる位、相互依存関係が強い状況なのです。このように印刷業界では全体的に厳しい会社も多く、黒字の印刷会社も1%台の低利益率が多い中、アイワード北海道内だけでなく、優良取引先を北海道外にも持ち、着実に業績を伸ばしています。
木野口功会長・奥山敏康社長の両名とお会いして、新しい話をお聞きしました。今年の1月、石狩工場に国内初となる「スピードマスターXL106-8-P 18K」(最高印刷速度1万8,000枚/時、菊全寸延び判8色両面兼用印刷機)を導入し、スマートファクトリー化を図ったとのことでした。同機は、ハイデルベルグが提唱する「Simply Smart」を具現化し、オフセット印刷の完全自動化を実現する「Push to Stop」コンセプトに基づいて設計された最新のdrupa2016モデルだそうです。
今まで、アイワードでは、老朽化した機械に変えて同機を導入したと言います。さらに冷暖房の全面更新や工場照明のLED化、変圧器の更新などで、生産性は1台で3台分以上の能力を確保しながらエネルギー使用量20%削減に成功していますが、投資額は数億円に上りますが、必ず成長している企業には、投資発想があると思います。
さらに、ビックリしたのは、坂本先生も私も、何度か訪れたことがある国内有数のお菓子メーカーが、アイワードを探して取引が始まったと言います。
アイワードの経営指針は、以下の通りです。
「言ったことは、きちんとやりあげる会社」から
「驚いた、感動した、と言われる会社」をめざします。
従来の「印刷業」の技術を大切にしながら
「情報価値創造産業」への業界変革に取り組んでいます。
当り前ですが、単なる印刷会社では、冒頭に書いたような厳しい状況になります。
アイワードは、特殊で難易度が高く、色の鮮明度が要求される美術の本などでは、抜群の技術による本づくりに取り組んでいます。
アイワードの本づくりは、ホームページに詳しくあります。
http://iword.co.jp/outline/
最新の機械投資に加え、拘りの本づくりにより、他の印刷会社との差異化を図っているのです。
実は、現会長木野口功さんは、中小企業家同友会の事務局に勤務していた方です。当時、厳しくなり倒産をしかけたアイワードの面倒を見ることを頼まれ、今まで、経営革新をしてきました。現在は、奥山社長を後継者にし、事業継承を推進しているところですが、中小企業家同友会の中でも、元職員といったことだけではなく、その取組みの素晴らしさから、地元では尊敬されています。
その一つは、障がい者雇用です。現在、障がい者は、全社員の18名が働いていますが、重度障がい者は、ダブルカウントで計算されますから、約1割が障がいを持った方です。なぜ、障がい者の方が多く集まるかと言えば、アイワードに勤めている障がい者の方が、「アイワードは、いいよ」と友人の同じ聴覚障害を持つ方から噂を聞いてやってきた方を雇用し続けたからです。現在、出版会社もグループ経営を行っていますが、雇用を守るために引き受けたことが事業展開してきた理由です。
また、某地元菓子メーカーの仕事を継続的に担当しているために、他の地元菓子メーカーには営業をしないといった律儀な会社であることも、共感を持ちました。
働く仲間、地元の人が口を揃えて「いい会社」と言うアイワードは、正真正銘のいい会社なのだと思います。
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