カメさん日報です。
3年振りに単著を出すことになりました。著書名は、「いい会社」のつくり方です。紙面の制約はありますが、日本でいちばん大切にしたい会社の際だった取り組み事例をもとに、自社でも取り組めるように、理論を平たく添えて10の方法を提案しています。
成長が見込めない経済状況下では、企業は、人件費を抑えるために、正社員から非正社員化が図りました。2000年代は、特に非正社員の若者は、「フリーター」と俗称され、真面目に働こうとせず、安易な労働に従事していると言われました。さらに、働く意欲が低い代表格として「ニート」といった言葉も現れました。しかし、彼らは、働きたくても企業が正社員の採用を絞っていたために、働けないといった状況であったことも事実です。この頃、勝ち組、負け組といった言葉も聞かれました。2008年に派遣切りがマスコミでも大きく取り上げられました。こうしたことがあり、先があり収入が多い正社員に対して、先が見えず収入が少ない非正社員といった構図から、正社員を目指した競争が激しくなりました。同じく2008年には、ブラック企業に関する本が出版され、映画にもなりました。
最近は、ブラックバイトが問題になっていますが、当時のブラック企業問題の対象は正社員でした。ブラック企業は、長時間労働、サービス残業、パワーハラスメントが常態化しているのが特徴です。こうした劣悪な環境の中で、メンタル疾患や身体を壊すのであれば、努力して競争に勝ち抜き、正社員になっても希望が持てるどころではありません。2008年はリーマンショックが起きた年でもありますが、企業が苦しくなるのと、ブラック企業が増えたといったことは無縁ではないでしょう。
偶然ではないと思いますが、坂本教授が、2008年、日本でいちばん大切にしたい会社のシリーズが70万部のベストセラーとなりました。また、同年、私自身のもう一人の恩師である嶋口充輝慶応大学名誉教授が、「ビューティフルカンパニー」を出版しています。
こうした時代背景の中、いい会社を増やす国民運動として、日本でいちばん大切にしたい会社大賞ができて、今年は、7回目となります。
坂本教授は、「いい会社」が増えれば、日本が直面する問題が解決すると言います。
「いい会社は、黒字で税金を払っている」ので膨れ上がった国の借金が減る。
「いい会社では、社内結婚が多く子供の数も多い」ので、少子化問題の改善に繋がる。
「いい会社は、高齢者、女性、障がい者などの雇用に熱心なので、雇用問題が改善される。
経営者であっても社員であっても、「いい会社」にしたい。そうした「いい会社」で働きたいということは共通の思いであると思います。
しかし、「いい会社」に変革するために、何に、どのように取り組んだらいいのか?といったことを仕事柄聞かれることが多くなりました。
2009年~坂本先生と活動を共にし、年間100社程、企業視察訪問を継続しています。さらに、日本でいちばん大切にしたい会社大賞の事務局として多くの企業の審査に立ち会ってきました。「いい会社」を育ててきた先輩経営者が実践してきたこと、大切にしていることを教えていただきました。教わったことを、私の個人的な学びに留めず、一人でも多くの人に伝えることに、時代的な意義を感じて一冊の本にまとめました。
スペシャル対談として、数多くの有名企業の社外取締役を務めれる嶋口充輝慶応大学名誉教授と坂本法政大学大学院教授のスペシャル対談は、とても、示唆にとんだ内容で私も大いに勉強になりました。
8月5日に書店に並びますが、先行予約が始まっています。是非、読んで下さい。
目次は以下の通りです。
第1章「いい会社」とは何か?
会社は誰のためのものか 12
会社の目的とは何なのか 14
なぜ売上・利益が会社の目的だったのか 17
従来の「いい会社」を振り返る 21
「いい会社」は5者を幸せにする 24
なぜ「家族」や「社会的弱者」のためなのか 27
なぜ「社会」を考えなければいけないのか 31
第2章「日本でいちばん大切にしたい会社」と「普通の会社」の違い
「日本でいちばん大切にしたい会社」の応募資格 40
「社員とその家族」に関する審査基準 44
「外注先・仕入先」に関する審査基準 54
「顧客」に関する審査基準 58
「社会貢献」に関する審査基準 60
「企業永続」に関する審査基準 67
第3章「いい会社」の経営のあり方
「いい会社」に共通する10の特徴 80
特徴1 大家族的経営──人本主義経営 82
家族関係の団結の強さを生かす
人は材料でなく財産である
特徴2 全員参加経営 86
現場の情報力、知恵を総動員する
ワンマン経営と比較してみる
特徴3 年輪経営 90
適正な成長スピードで経営基盤をつくる
組織成長が生むリスクを抑える
特徴4 バランス経営 93
受注先の請負配分のバランス
受注製品と自社製品とのバランス
特徴5 理念経営 96
すべての経営は理念を中心に動かす
理念を利益につなげる仕組みづくり
特徴6 社会貢献経営 100
会社を一人の市民と考える
社内外にプラスの効果を生み出す
特徴7 市場創造経営 104
既存市場に頼らず新市場を開く
ニーズよりウォンツをつかむ
特徴8 感動経営 108
共感が好循環をつくり出す
喜ぶ相手の心理を先読みする
特徴9 非価格経営 110
価格で勝利してもいいことはない
価格競争が成り立つのは大企業だけ
特徴10 自己資本重視経営──BS経営 113
利益が多く出たとき、どう処理するか
蓄積するものはお金だけではない
第4章「いい会社」をつくる10の方法 117
方法1 魂の経営理念をつくり共有する 118
企業理念が経営を救う
経営理念は誰がどうつくるか
ヒストリカルレビューと自問手法を使う
どんな経営理念をつくるか
経営理念をどう共有化するか
経営理念共有化の効用は何か1
方法2 会社の将来像を策定する 134
会社の将来をイメージとして表現する
ビジョンは誰がどうつくるのか
ビジョン策定の8ステップ
方法3 非価格競争ビジネスの仕組みづくり 142
「いい会社」でのビジネスの仕組みづくり
値決め権を持つ経営の仕組みづくり
革新的なビジネスの仕組みづくり
方法4 社会的責任を果たし社会貢献に取り組む 153
社会的責任と社会貢献
社会的責任
基本的責任
義務的責任
社会貢献
方法5 経営理念と合致した経営管理の仕組み 165
経営理念と経営管理の一貫性
経営理念に沿って日常を管理する
経営理念に沿った経営管理体系をつくる
方法6 経営理念・組織文化に合う人財戦略 172
経営理念・組織文化に合致した採用
徳志知の人財を育成する6つの方法
方法7 経営方針書を作成する 184
経営方針書のメリット
経営方針書のつくり方
方法8 社員の意識調査を定期的に実施する 195
社員の意識調査を実施する
社員意識調査の留意点
方法9 経営リーダーシップを発揮する 203
リーダーシップは背中と心で示す
背中と心のリーダーシップを身につける
自分を理解する努力をする
覚悟を決めて修羅場経験を積む
方法10 5S・凡事徹底に取り組む 214
5S・凡事徹底が大切な理由
5S・凡事徹底は企業の戦略
5Sを誰がどう始めて定着させるか
第5章[対談]あの会社は本当に「いい会社」なのか 221
慶應義塾大学名誉教授 嶋口充輝
法政大学大学院教授
人を大切にする経営学会会長 坂本光司
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