カメさん日報です。
最近は、専門でもないので財務研修を担当することは控えています。自分より、クオリティーが高いメンバーがいるのに、自分が出しゃばるのは何もいいことはないからです。自分自身が財務研修を行う際、心していたことを書きたいと思います。それは、単なる基本の説明で終わらないで、実際の経営と財務を、いかにリアリティーを持って繋げるかです。
貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)、経営分析として収益性、成長性、安全性・・・といった分析を上場会社の財務諸表を分析します。財務諸表では、その企業の全てはわかりませんが、ある程度、経営の意図がわかります。
例えば、自己資本比率ですが、銀行から借入に頼らないで済むことを考えれば高い方がいいとされます。しかし、実際は、以前のトヨタのように十分に自己資金があった企業でもあえて自己資本比率を30%程度の抑えています。トヨタに限らず大手企業の多くはこうしたことをやっています。いろいろな要因がありますが、一つは、自己資本コストが掛かるからです。大手会社は、中小企業と異なり上場している企業が多く、株主は当然高い配当を求めます。すると、銀行で借りていた方が、株主に払う配当よりも少ないといったことがあるからです。さらに、銀行とのお付き合いを考えれば、多少なりとも借りておいた方がいざというときに融資してくれるといったように、多面的に考える必要があります。
以前、HOYAの当時の会長の講演を聞きましたが、ホリエモンや村上ファンドがよくマスコミに出ていた時代で、あらゆる手を打った上で、
結果的にROE(株主資本利益率) = 当期純利益 / 株主資本 × 100
を高めるために銀行から借りたといったお話を思い出しました。正確性よりもわかり易さを優先して簡単にいえば、自己資本比率を高めるとROEは低くなります。
それ以外にも、流動比率があります。これは、1年以内に返す必要があるといった流動負債と1年以内に現金化でいる流動資産で、多くの財務の本は、高い方がいいと書いてあります。1年以内返さなければならないお金より1年以内に現金化できるお金が多い方が安全というのはわかりますが、実際、どの位がいいのでしょうか?
流動資産÷流動負債=300% であったら、どうでしょう?実際、そのような会社あります。ひょっとしたら、在庫が多すぎるかもしれません。売掛金が多いかもしれません。在庫が必ず売れるとは限らず、売掛金も回収できるかどうかわからず、売掛金が多いということは、キャッシュフロー上お金が回らなくなるかもしれません。では、現金が多ければいいだろう?と言われそうですが、ひょっとしたら、将来の会社の成長に繋がる投資に充てた方がいいといった可能性もあります。つまり、あれやこれや考えた上で、どうするかの意図が必要なのです。
財務研修を、例とした上記のようなことを挙げましたが他の分野でも同じです。例えば、経営戦略ですが、一昨日、世の中を変えた人達が突き詰めて考え抜いているといった私なりに整理している特徴を書きましたが同じだと思います。様々な戦略の考え方を知らないよりは知っていた方が思考は広がるでしょう。しかし、自社のビジネスに置き換えて突き詰めて考えることに加え、アクションラーニングでやりながら学習していく面の両面が必要です。
経営には、財務、戦略、マーケティング、組織・・・・・のアカデミックで整理されたサイエンスが重要です。しかし、勉強した通りやって、すべてがうまくいくかというとそうではないと思います。様々な勉強をした上で鼻血が出る位徹底的に突き詰めて、ふと・・ヒラメクといった面が実際ではないか?と思います。しかし、サイエンスは当然重要で、単に勘だけでは再現性がある意思決定が続けられるものではありません。だから、サイエンスは重要で、もっともっと勉強しなければならないし、そうした人が集まる会社にしないといけないと思います。
しかし、中途半端なサイエンスは、単なる頭デッカチで実際は成果を出すことはできません。長年、いろいろな人に会ってくると、言っていることはその通りだが、なんとなくこの人絶対に、うまくいないな~と直感します。その多くが、腹で考えないで頭で考えている人です。最終的には、経営に限らず、スポーツの世界でも芸能の世界でもサイエンスを突き詰めた上でのアートの世界になるのではないかと感じます。突き詰めた上での勘がアートであり、なんとなくは単なる思い付きで似て非なるものです。
いずれにしても、生業であるコンサルタント業においては、人とチームと組織の領域においてしっかりと学習して質の高いサイエンスを学び、お客様に伝えながらも、その先にあるアート、価値観、世の中の普遍の原則といった本質的なことの重要性も同時に伝えていく必要があると思います。
そのためには、まだまだ、遠く遠く程遠い領域ですが、毎日、毎時、毎分を大切にし、また、数多くのアートの領域に達した経営者や会社から学ばせていただき、同時にアカデミックな整理と融合させながら価値がある質の高いコンサルティングサービス、教育研修サービスを提供していかなければならないと改めて思います。
山根教授の本は、実業と財務をうまくリンクさせて、分かりやすく本質を教えてくれます。
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