カメさん日報です。
JAL再建で注目された京セラの創業者稲盛和夫さんは、「値決めは経営だ」と、随分前から言っていますが、本質を突いた発言だと思います。
多くの業種において、量と利幅との積の極大値を求めるわけですが、これには様々なファクターが入り、簡単に解くことはできませんが、どれほどの利幅をとったときに、どれだけの量が売れるのかを予想するのは、非常に難しいのが現実です。(特に、昔のように、値段を下げたからといって、量が売れるといったことはありません)
稲盛さんは、値決めは、経営を大きく左右するだけに、トップが行うべきものと言っています。どの値をとるかということは、トップが持っている哲学に起因しており、会社の業績が悪くなるとすれば、それは経営者の器の問題であり、心の問題であり、経営者の持つ貧困な哲学のなせる業だとまで、稲盛さんは言っています。
例えば、弊社で運営している講演依頼ナビの講演者は、90分が標準で1講演5万円~300万と幅が広いのですが、これは、主にその講演者のネームバリューが大きく影響します。しかし、同じ講演者でも5万~30万と、最も依頼が多い層でも開きがでます。これは、主催者の違いによるものです。
同じ内容を提供するのに、3~6倍の値段の違いが出るのは、サービス業の特徴の一つです。製造業、流通業とは違った意味で、難しさがあります。そして、ご時世だと思いますが、講演の平均単価は下がっています。講演の30万と5万では、利益の差がありすぎてピンとこないかもしれませんが、製造業、流通業でも本質は同じです。つまり、講演に限らず、安くすることだけが戦略では経営とは言えません。競争相手と一緒に価格を下げ続ける競争になれば、利益がますます厳しくなります。
利益が出ない会社、赤字会社の特徴は安売りです。価格競争している会社の経営者は、どうしたら高く売れるのかを考えることなしに、外部の責任にしますが、社員が一生懸命働いても安い給料しか払えません。このことを考えると、稲盛さんが言っているように、まさに、値決めは経営者の仕事で、社員を幸せにできるかどうか・・経営を安定させることができるかどうかは、まさに、経営者の手腕にかかっています。
経営的に、価格を下げなくて済むのであれば、下げないようにするべきだと思います。
世の中のプロモーションを見れば、価格競争をする企業が多いことに気づきますが、長年ウォッチングすると、本当に良かったのか??と思えることが多いが現実です。価格を下げると短期の売上は上がるので麻薬のようなものです。しかし、麻薬ですから当然、長い期間で見れば身体を蝕みます。
古い話ですが、1990年以降、アメリカの自動車メーカーは、日本車の攻勢のため、自動車を購入したら500ドル~7000ドルのキャッシュバックをしました、このプロモーションは、比較的長続きした効果のあるものと評価されました。しかし、結果的には、財務的にキャッシュバックの幅を少なくせざるを得なくなると、顧客は大幅に減り実質、倒産の一因になりました。もう少し手が込んだやり方で、「プレイキッジ」というやり方があります。これは、キャッシュバックの手続きを複雑化し、その複雑な手続きをするくらいなら申請しないというようなやり方で、通信販売などで行われています。私自身もその手口にひっかり、筋トレグッツを買いましたが結局キャッシュバックの申請をしなかったことがあります。
営業というのは値段を安くすれば誰にでも売れます。お客様が納得して喜んで買ってくれる最も高い価格設定が重要です。それよりも低かったらいくらでも受注は取れるが、それ以上高ければ受注できないギリギリの一点で受注するのが経営の妙です。どうしたら希望する価格で買っていただけるのか?を徹底的考えに考え抜くことが重要です。
安定成長の時代であれば、稲盛さんがいっている原則は当てはまります。人口減少で、需要が通常のやり方では増えない時代は、さらに工夫が必要になります。
一言で言えば、
1.利益が出る商品サービスと利益が出ない商品サービス
2.利益が出るお客様と利益が出ないお客様
3.最初に利益を出すか、後で利益を出すか
他、様々な画が描くことができますが、意図的に収益モデルをデザインすることです。
長くなりますので、詳しくは別の機会にしたいと思いますが、昔から行われてきたマーケティングの手法です。
身近な例であれば、料理でなく、お酒も利益を上げる。子供を無料にして親を巻き込む。最初、無料にして徐々に利益を出す。など、頻繁に今でも行われています。
この収益デザインの仕方に知恵を絞る必要があります。
現在、非価格経営の研究をして、アンケート調査や非価格競争を実現している会社にインタビュー調査を行っていますが、なるほど・・・と思えるモデルをデザインしています。
価格競争は、誰も幸せにしません。残業が多くなり、利益も出ず・・そのため、退職者も多くと悪循環になります。そうならないためにも、値決めは、まさに、稲盛さんが言うように、営業部長に任せるのではなく、経営者自身が真剣に取り組むべきだと思います。
書評にあるように、書いてあることは基本的なことで目当たりさはありませんが、「値上げの秘訣は、まず、価格をあげてしまうこと」といった切り口は、石原さん独特の感覚で、なるほど・・と思えます。
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