カメさん日報です。
本日は、顧問契約先の定期コンサルテーション、会社も戻って、研修資料作成その他を行いました。
経営は、学際的ですので様々な観点から考える必要があります。一方、経営学になると、戦略、組織、財務、他、分野毎に分かれています。もちろん、それぞれ関連がありますので、繋がりの中で整理する必要があります。
最も株価に連動している財務諸表は、その企業のROE(株主資本利益率)です。私なども普段から気を付けなければならないと考えているのは、単に指標の数値が基準より高い低いで判断してしまうことです。しかし、財務の本には、数値の良しあしを断定的に書いているものもあるので要注意です。
例えば、ROEを上げるには、粗利益率を上げる必要があります。そして、通常、ハード産業よりもソフト産業の方が有利です。アメリカではマイクロソフトの粗利益率は85%以上です。それに、対して、日本の機械や鉄鋼などの製造業は、平均すると10%程度にしかならない産業も多くあります。したがって、もし株価を考えるなら、ハード産業はやらないといった判断になったり、材料費が掛かるハード産業を手放して外注化して、ソフト産業だけにしてしまうといったことになります。そして、人件費その他が低いといった理由だけでなく、ハード産業は抵コスト地域にまかせて、ソフト産業だけにすれば粗利益率は残ります。アメリカに、ソフトウエア産業しか残っていない理由の一つは、株価を考えた経営とも言われています。
ホリエモンで有名になった企業価値(時価総額)を大きくする経営は、短期の財務的な面だけを評価して、人間が本来求める幸せとは無縁であり、よい製品を造ることや、こころ温まるサービスを提供するといったことが、ないがしろになったのは、少し前の状況です。
そして、実際に、持たざる経営を良しとして、自社工場を売却してROEを上げるといったことが行われました。しかし、研究開発と生産部門(工場)を切り離してしまえhば、2つの組織間のフィードバックが働かずメーカーとしての強味を無くしてしまう危険性もあります。つまり、ROEなど、株主を重視する経営を行えば、効率が低いところは切り離す、生産性が上がらない人はリストラするといったことになります。しかし、中長期的にみれば、大切な自社の資源が無くなって中長期的に繁栄することはありえません。まさに、ROEだけを重視する経営は、中身がまだ未熟なイケメンや美女に憧れるのと同じであり、後で後悔することになりかねません。
利益の株主還元は、ROEを押し上げる効果があります。ROEは、当期純利益を株主資本で割って計算します。自社株買いも配当も分母の株主資本を減少させるので、ROEが上昇します。前述のとおり株主資本からどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示すため、インプットである株主資本を小さくすれば、その効率性は確かに高まります。
昨日、公益資本主義の考え方を紹介しましたが、財務的に見ても当たり前の理屈を、優秀なエリートが気付かなかったのか不思議です。あるいは、気づいていて一時的に儲けての逃げ切りを考えているのかも知れません。もし、そうだとすれば、教育を悪用する不届きものです。
資金に余剰感があるなら、株主ではなく従業員に還元するといったことを、財務的にどう評価するかを考えてみたいと思います。例えば、給与を増やしたと仮定します。株主に還元したら企業を縮小させることにしかなりませんが、社員に還元すれば新たな富が創出される可能性があります。
資本主義には、「お金がお金を生む」という考え方が根底にあります。お金で工場を作り設備を導入し原材料が買い生産する。工場で働く安い労働者を確保すれば、新たな富を生み出出すことができるといった前提で、お金の提供者である株主が最も重要なステークホルダーと位置付けられました。
一方、米経営学者のP.F.ドラッカーは、「ポスト資本主義において最も重要な経営資源は知識だ」と主張しました。知識という重要な経営資源を提供できるのは株主ではなく、企業で働く社員です。株主はお金を提供できても、ノウハウやアイデアなどの知識は提供できません。とういうことは、ポスト資本主義において最も重要な経営資源を提供するのは社員ということになります。
そう考えれば、もし、利益が出たら株主ではなく社員に還元したほうが、新たな富を生む可能性があるといった理屈になります。
坂本先生は、「昔、経営資源は、人、モノ、カネといったけれど、今は、人、人、人だ。なぜなら、ビックリするような感動の商品を作るのも感嘆のサービスを生み出すのも、人だからだ!」と言われます。坂本先生が言うと、日本でいちばん大切にしたい会社の著書であるので、エモーショナルな印象を持つ人もいるかもしれませんが、ドラッカーの理屈からすれば、確かに知識を生み出す人が一番の資源であり、そこに、利益を還元してモチベーションを高めることが、企業のさらなる成長に繋がる可能性が高まるとも言えます。
つまり、経営を財務的な観点から見ても、社員を大切にする経営は、永続発展に繋がるという仮説が成り立つのではないでしょうか?
最後に、株主価値を目標とすることが、その企業及び業界に対して、悪影響を及ぼすことに自覚的であるべきだ!と主張している本を紹介します。